それぞれ手を繋いで歩き出す。
ジョウの手は、いつもあったかくて私の冷たい手が暖められる。
後ろに居る美緒も、少し恥ずかしそうに、歩いてる。
「俺、水族館初めてだ」
中に入り、魚の模型が並ぶ前で呟いたジョウ。
私はそれを聞き逃さなかった。
「嘘でしょ?水族館なんて、誰だって…」
「いやいや、まじだから」
鮭の模型を触りながら、ジョウは鼻で笑った。
「ジョウ!何やってんだよ、早くしろ」
遠くの方から、仁君が手を振っていた。
適当に返事をしたジョウは、一瞬私を見て一人で歩いて行ってしまった。
こんなにも好きなのに…
私は、ジョウのこと、何も知らないんだね…。
「マンボウだってよ」
「へぇ~…」
仁君と美緒は、ピッタリとくっついてるのに。
私達は距離があった。
「すっげー!洞窟!」
ポケットに手を突っ込んで、キョロキョロと辺りを見回すジョウ。
私はガラスに手をついて、小魚を見てる。
「…日芽達、どうしたんだろうね…?」
「…さぁ…」
そんな小さな声も、聞こえてきたよ。
「……あれ…?」
私が洞窟を抜けた時、既に美緒と仁君の姿わ無かった。
ジョウはまだ洞窟の中で魚を見つめている。
「ジョウ、美緒達居ないよ」
「…はぁ?あいつら…」
その後は、声が小さくて聞き取れなかった。
「探す?」
そう言って歩き出すと、いきなりジョウは私の手首を掴んだ。
真剣な表情が、少し怖い。
「…いいよ」
「え?」
「探さなくて良い。俺らは俺らで行動しようぜ」
言うと、私の手を引っ張って歩き出す。
そっか…。
ジョウが別人の様になったのは、二人が居たからなんだね。
可愛い姿を、見せたくなかったんだね…。