「日芽、24日から旅行行くわよ」
ソファに座っていた私に、お母さんが言った。
【24日、二人でどっか遊びに行こう】
ジョウに言われた言葉を思い出すと、首を横に振った。
「私行かない。友達と約束しちゃったし」
「何言ってるのよ。旅行は毎年行ってるじゃない。忘れてたの?」
「うん」
「断りなさい」
それを聞いた瞬間、私は見ていた雑誌から顔を上げた。
翔太も驚いて、目を丸くさせてる。
「ちょっと待ってよ。何でそんないきなり」
「いきなりじゃないでしょ?」
「信じらんない」
言うと、また雑誌に目を落とした。
リビングに沈黙が走る。
「お母さん…姉ちゃんだって、色々あるし…」
気を使った翔太は、お母さんを説得させようと口を開く。
でも、お母さんは気にせずにテーブルを拭いていた。
「だったら、三人で行くわ」
呆れた様に言うと、そのまま台所へ歩いて行った。
「…姉ちゃん、約束してるのって、あのお兄ちゃんでしょ?」
台所に行ったお母さんを確認した翔太は、小さい声で笑った。
「うるさい」
照れながら言うと、翔太は嬉しそうに立ち上がった。
「ラブラブ!!」
「…なっ!」
それだけ言うと、逃げる様に二階へ上って行った。
「お父さんに言うから」
台所から聞こえたお母さんの声を無視。
そして、部屋へ向かった。