「譲君っ!!!!」
冬空が広がる、12月4日。
俺等が住む横浜は、乾いた冷たい風が吹き、人々はマフラーに顔を埋める。
「なに…?」
日芽が居なくなってから一週間。
誰もがそれを忘れそうになっている頃、知らせはやって来た。
「けっ…警察が、動き出したって…」
「…え…?」
息を切らせて、それでも必死に内容を告げる美緒。
美緒は、日芽が居ない間、何度も泣いていた。
見る度に腫れている瞼が、日芽を思っている証拠だった。
俺と日芽が話せる様にしてくれたのは、美緒。
美緒のおかげなんだ。
「みなとみらいの、アパートに…!」
それを聞いた瞬間、俺は走り出した。
先輩や友達に呼ばれても、先生に注意をされても。
気にせず走り続けた。
駐輪場に出て、バイクを出す為の準備をした。
跨がって、ヘルメットを被る。
「…ジョウ!!」
出そうと思った瞬間、呼び止められ、その声の持ち主が分かっていたから、敢えて振り向かなかった。
「…何だよ…瑠奈…」
振り向かなくても、瑠奈が肩で息をしていると分かった。
「…行かないで!」
「………」
「…行かないで!私、あの時はあんな事言ったけど…ホントはジョウのことが、好きなの!!」
「………」
「…だから…だから…」
「…お前等、皆…卑怯だよな」
「待って!ジョウ!」
瑠奈を無視して、バイクを走らせた。
日芽を最初に触るのは、俺だ。