―…ウ……ジョウ!


「…え?」



気付いたら、前の席に仁が居た。


日芽が居なくなってから、二日が経った。


何の手掛かりも掴めないまま、時間が過ぎてしまった。


美緒から渡された、日芽の橙色の携帯。


日芽は文化祭の日、教室に置きっ放しで、今も沢山の着信やメールが届いている。


…俺は、何をしているんだろう。



「お前…大丈夫かよ」


「…大丈夫な訳ねぇだろうが。警察も何の役にも立たねぇ」


「諦めれば?」


「はぁ?」



頬杖を着く仁を睨む。


こいつは、何も分かってねぇんだ。



「誘拐だろ?だったら、諦めて記憶から消して、新しい女つくっちゃえば良いんだよ」


「………」


「…だろ?」



言葉が出ない。


前で怪しく微笑む仁。



「…俺は…お前とは違う」


「一緒じゃん」


「一緒じゃねぇ。俺は、あいつに本気だ。お前みてぇに飽きたら次、なんて出来ない」


「よく言うな。周りにいっぱい女居るくせに」


「俺が呼んでんじゃねぇ。お前と一緒にすんな」



言うと、立ち上がって教室を出た。


何をするにもやる気がしない。



「ジョウ!彼女が居なくなったって、ホント?」



廊下に居た三年に話しかけられた。


適当に頷く。



「何処連れて行かれちゃったの?」


「…知らねぇ」


「…じゃあ…今、チャンスなんだ?」


「…先輩、そういうの、ずるくないっすか」


「えっ…」



適当に廊下をフラフラと歩く。


話しかけて来る内容は、全部同じ。


苛々する…。


日芽も、こんな気分だったのかなぁ。


…もやもや気分。