―大丈夫かよ…


―俺知らねぇから



焦点の合わない目が、辺りを見回す。


結構大きめの車の真ん中に、私を囲む様に男の人が居た。


縛られては、ない。



「よう、起きちゃったかい?お嬢ちゃん」



起き上がると、運転手の人が振り向いた。


赤信号…



「助手席来い」



振り向くと、私を引っ張って車に乗せた人だった。


助手席のシートを倒し、私は助手席に移動した。



「…お前、俺が客だと思ったろ?」


「…だって、」


「違うから。良い女、探してただけだし」



静かに、冷たく言う男の人。


後部座席の人達は、何かで盛り上がっている。



「……、誘拐?」


「うん」



可愛く微笑んだ彼は、目が笑ってなかった。


私の視界は、一気に暗くなって何も考えられなくなった。



ジョウ、私…約束すら守れない。


動かないって、言ったのにね…。


何誘拐されてんの?



「…へぇ、さすが。動揺とかしないんだ?」


「だって…暴れたって、逃げられないでしょ……?」


「まあね」



そんな冷静な言葉を言ったって、私の体は震えてる。


余裕なんてない。



「…ま、着くまで寝てれば?何もしないし」


「………」



緊張して、寝れやしない。


暫く、窓から外の景色を眺めていた。


その時も、後部座席は賑やかで前が沈黙しているのが分かった。