「おい」
「ぐぇっ!」
いきなり、ブレザーの襟を引っ張られ、後ろに手をついた。
見上げると、宣伝をしていた時の金髪が居た。
「どうしたんですか?一般公開終わりましたよ。あ、忘れ物?」
「違うわ」
襟を離され、立ち上がる。
男の人は、昼間とは違う雰囲気を漂わせている。気がした。
「忘れ物なら、私が取りに…」
言うと、遮る様に私の腕を引っ張った。
何処行くの?
声が、出ない。
「日芽ーっ!!」
俺が、教室から戻って来た時、木の下に居た筈の日芽は居なくなっていた。
辺りを探しても、人込みをかき分けても…何処にも居ない。
「……譲君?」
振り返ると、美緒が心配そうな顔で俺を見ていた。
「日芽見なかったか!?」
「え…居ないの…?」
「…あそこに居るって言ったんだ…。けど、居なくなった」
「…探すね!奈津と弥生にも頼む!」
「…サンキュ」
美緒と反対方向に走った。
人込みをかき分けて、学校の隅々まで探す様に。
時々、携帯に電話したけど電波が届かない。
日芽、お前は、やっぱり俺のことが嫌いになったのか?
だから、逃げたのか?
俺、バカみたいに必死こいて走り回ってるよ。
こんなに必死になったの、初めてだぜ?
だから…俺から離れないでくれよ。
一生の願いだ。