「交代の時間だよ」
「うん」
残った紙を渡して、私達は教室へ向かった。
教室から、ジョウの女の子姿見えるかな。
見えると良いな…。
―いらっしゃいませ!
「…ジャガバターって、時間かかるし、面倒臭いねぇ」
「…うん」
蒸し器の前で、怪訝な顔をする美緒。
確かに、美味しいのは美味しいけど。ね。
私は、何度も振り返って、窓から反対側が見えるか気にしていた。
でも、カーテンが閉まっていて見えない。
タダ見は、許されないんだね。
蒸していたジャガイモを取り出し、残りの数を数えた。
「残り5個でーす!」
注文係の人に大きな声で言った。
「日芽、エプロンに三角布巾、似合ってるねぇ!」
「そんなことないよ!」
「いや、きっと、譲君が見たら、喜ぶだろうね」
弥生がハシを片手に、腕を組む。
奈津が笑った。
「…今、喧嘩中なの」
「…はいぃ!?」
「ジョウが他の女の子とキスしてたの!理由も信じられなかった」
俯くと、赤の上履きが見えた。
顔を上げると、蒸す煙がもくもくと天井に向かってる。
「じゃあ、譲君の女装姿、見てないんだ」
「…私が行って来るよ!!」
「あっ、奈津!?」
奈津が弥生を連れて教室を出た時、ジャガイモが完売した。
私達のクラスは、初日から絶好調。
美緒は、蒸し器を片付けながらお客さんを見ていた。