あの後、美緒と一緒に私が通った廊下や駐輪場を探した。


でも、何処を探しても見つからなかった。


そして、そのまま文化祭当日。



「ジャガバターよろしくお願いしまーす」


「どうぞ、来て下さーい」



美緒と奈津、弥生と私の四人で門の辺りで紙を配った。


でもね、私は、ジョウの女の子姿が見たくて見たくて、うずうずしてるの。


喧嘩中でも、見に行きたいな。



「ジャガバターよろしくお願いしまーす」


「…日芽、見て、あの人ー!ずっと桜の木の陰からこっち見てるの!」



奈津が私の後ろに隠れて言った。


確かに、桜の木の陰に人が居てじっとこっちを見てる。



「何だろうね?」


「キモい!」


「私、言って来るね」


「危ないよ!?」



止める奈津を置いて、私は冷たい風を堪えながら、そこに歩いた。



「あの、すみません」


「あ…」



驚いたのか、デカい男の人は一歩下がった。


よく見ると、金髪で顔が恐い。



「ジャガバターやってるんで、良かったら来て下さい。無料ですよ」


「おぉ!」



紙を渡すと、男の人はにっこりと微笑んだ。



「日芽、大丈夫だった!?」


「うん。不良っぽかったけど、笑ってくれたよ」


「あ~あ。今の、譲君が見たら悲しむだろうなぁ…」



美緒がわざとらしく溜め息を吐く。


私は、美緒の背中を叩いた。



「もう!バカなこと言わないで!」


「だって、ホントのことじゃん。あの人、ちょっと譲君に似てるし」


「…似てないよ」



呟く様に言うと、またジャガバターの紙を配り始めた。