適当に走った。
文化祭の準備を進める人達の間を通り抜けて。
体力がないことなんて、自分が一番分かっているのに。
「……はぁ…」
体力が無くなり、しゃがみ込んだ場所は駐輪場だった。
うっすらと季節に合わない汗をかいて、顔を上げる。
そこには、ジョウの原チャリが停めてあった。
私が後ろに乗っていた原チャリ。
ジョウと二人乗りした原チャリ。
涙で原チャリがぼやけて見えた。
「……ジョウ…何で?」
通り行く人達が、私を見て何かを言って行く。
そんなことお構いなしに、私は泣き続けていた。
そして、立ち上がると体が軽いことに気付き下を向いてみた。
「……ない!」
胸元に付けていた、ジョウから貰ったピアスが無くなっていた。
先程までは、確かにあったのだけど。
「…どうしよう…」
一応、辺りを探してみたけどある筈もなく。
神様が、私にジョウを忘れろと言っているみたいだった。
来た道を丹念に探してみたけど、案の定、無かった。
そして、手ぶらのまま教室に入った。
「どうしたの?そんな顔して」
美緒が私の顔を覗き込んで、心配そうに言った。
「…ジョウから貰ったピアス…無くしちゃった…」
「え?」
「何処探してもないの…さっき、喧嘩しちゃって…バチが当たったのかなぁ?」
「…付き合ってたら、喧嘩なんてよくあるよ。また、よく探そう。私も手伝うから!」
「……うん」
性格が悪いと言われた須藤さんも、ジョウに気がある友美ちゃんも。
みんな、私のことを見ていた。