「日芽~、何やってんだぁ?」
「……れ?」
気付けば、私は長椅子の上で眠っていた。
慌てて起き上がって窓から外を眺めたけど、ジョウの姿は無かった。
あれは……夢?
「…私、いつから寝てた?」
「私は奈津と話してたし、分かんない」
美緒に『嘘でしょ?』と問いたくなる。
しかし、美緒は看板を持って教室に向かってしまった。
一人取り残された私は、ぼーっと窓の天井を仰いでいた。
「日芽!」
空に一匹の鳥が飛んだ時、聞き慣れていた声が渡り廊下に響いた。
「……ジョウ…」
「どうした?」
そう言って、ジョウは私の隣に腰を下ろした。
「…ジョウ、ごめんね」
「何が?」
「一人でややこしいこと考えて、迷って、心配だった………でも、訊きたいことがある」
「…なに?」
先程のことを訊こうと思った。
崩れは、しないと思う。
「…私の知らない人と…キスした?」
真直ぐにジョウを見て、訊いた。
でも、ジョウは直ぐに目を逸して黙り込んだ。
「…何で知ってんの?」
―バシッ!!!
騙すつもりだったことに気付いて、ジョウの頬を平手打ちした。
信じてたのに、裏切られた。
「…何で知ってんの?って…?信じられない…人がどんな気持ちで…」
黙り込むジョウを見て、その場から逃げた。
初めてだから。
付き合うことが、初めてだから、どうしたら良いのか分かんない。