「斜めってる!右がもう少し上だよ!違うって、もう!!」
「美緒、血管切れそう…」
待ちに待った文化祭が近付いて来る。
文化祭期間の今は、看板作りや衣装など、簡単なものから作業していく。
私達は、渡り廊下で看板を作っているけれど、男子が言うことを聞かないのに美緒がキレていた。
「私は良いと思うよ」
「日芽おかしい!どう見ても右に傾いてんの!!」
男子がお手上げをしているのにも関わらず、美緒は怒鳴り続けている。
そんな中、私は窓から校庭を眺めてみた。
色々な看板や道具が作られている中、一人騒ぐ人を見つけた。
「…ジョウだ」
ジョウとは、最近連絡もしていないし会ってもいない。
理由は分からないけど、前の様に遠い存在に戻ってしまったみたい。
「…譲君?」
心配した美緒が、私の隣に来て言った。
「うん。何か、変わったかも」
「そう?あ、奈津!」
背後に感じた奈津の気配を察知した美緒は、看板のことを奈津に相談していた。
再び一人になった私は、ぼーっとジョウのことを眺めていた。
「…っ」
何も考えられないけど、私の目に映るのは現実。
…ジョウは、隣にやって来た女の子に抱き付いた。
「…何で?」
抱き付いて、頭をぐりぐりってして、ほっぺたにちゅって…。
「…バカみたい」
呟いて、渡り廊下を挟む様な形である長椅子に腰を下ろした。
きっと、ジョウは私ともう別れたと思っているんだ。
「…ジョウ……」
何も言わなくて
ごめん。
連絡してなくて
ごめん。
ごめん、ごめん。
何度だって謝るから、だから早くその子から離れて…。