「…何か、今日は色々とあったなぁ」



帰り、駐輪場でバイクを出す準備をしているジョウが呟いた。


私は、涙が出そうになるくらい悔しい思いを抑えて、俯いていた。



「…どした?また、何か言われた?」


「…ジョウは…、誰にでも優しすぎるよ。私、何か…疲れた…」


「…日芽?」


「…ごめん。何でもない。…帰ろっか…」



相談した方が良いことなのかもしれないけど、これ以上言ったら涙が出そうだったから止めた。


ジョウは、私の顔を覗き込んで何があったのか問うて来たけど、言えないよ…。



「言える様になったらで良いからな」


「…うん」



その会話の後、ヘルメットを渡されてバイクに跨がった。


大好きなこの位置も、今日は抵抗があった。



「日芽、まじでダメになったら、いつでも電話しろよ!」


「…うん」


「俺に出来ることなら、何でもする!」


「…ジョウ」


「うん…?」



バイクに跨がったままのジョウに抱き付いた。


空は橙色、カラスがうるさいくらいに鳴いている。



「…信じるよ…?」


「おう!」


「……大好き」


「…俺も」



最後にキスをして手を振った。


…今日は、家に入るのが恐い。



「…ただいま」


「あ、おかえり…日芽、どうしたの?具合でも悪い?」



丁度廊下を歩いていた母親に引き止められ、階段の途中で立ち止まった。



「疲れただけ。ご飯はいいや」


「そう?じゃあ、早く寝なさいね」


「うん」



部屋に入って直ぐ、ベッドに寝転んだ。


明日が来なければ良い…