「横山!!」
「んー?」
ジョウと別れた後、廊下を歩いている担任を見つけ、走って追掛けた。
「横山、ありがとう!横山が担任で良かったよ!」
「あぁ、うん」
「何その返事!」
「ははは」
笑って誤魔化されると、横山は体育だからと言って体育館へ向かってしまった。
「日芽、ジョウのクラス何だって?」
教室に入ると、私の席にジョウ狙いの女子が座っていた。
名前は覚えていない。
「異性変装の喫茶店」
「まじ!?確認しようっと!」
わざとらしく言った彼女は、携帯を取り出して耳に当てた。
そして、席から立ち上がると教室から出て行った。
信用しないなら、訊かなければ良いのに。
「今のなに!?須藤さんって、性格悪かったんだ!?」
小さい声で、しかし悔しそうに言う美緒。
時々思う。
ジョウは、男女関係なく、誰にも優しいんだなって。
だから、余計に困ることが多々ある。
「そのピアス、譲君に貰ったんでしょ?」
席が近い女子が、羨ましそうに言って来た。
目を輝かせて…、確か、友美ちゃん。
友美ちゃんは、優しくて不快感にさせられることはないけど、ジョウに気がある子。
「…良いなぁ」
今は、ジョウの優しさが、私の精神を不安定にさせている。
「聞こえない…」
先輩達の作戦には、絶対引っ掛からない。