震える手を抑えて、教室に入った。
その瞬間、昨日とは違う視線が私に集まった。
「………」
沈黙の中、私は机に座ると誰かが合図でもしたかの様に一斉に騒ぎ出した教室。
何かが聞こえる度に、ビクンと驚いてしまう。
「静かにー!ごーれい!」
担任が入って来たのと同時に、一斉に各々席に着く。
「えー…何か、色々と変な噂を流してる奴が居るが、お前らは気にするな」
「…どういう意味ですかー?」
「じゃあ、私達は援交してるかしてないかって人と、仲良くしなきゃいけないのぉ?」
「援交!?誰ー!?」
援交………?
そんな噂が、今…?
「橋下」
前の席の杉山が、冷たい声色で言った。
昨日は、あんなに良い感じに話してくれたのに。
「うそー!?日芽ちゃん大人しそうなのに…?」
「大人しいからだろ?」
「お前らうるさい!!!」
担任が怒鳴ったのにも驚いた私は、涙が出そうになった。
「橋下はやってねぇ。何を証拠に言うかって?良い子だからだよ」
初めて怒った担任に、誰もが怯む。
「辛いことがあるかもしれねぇ。絶え切れねぇことがあるかもしれねぇ。でも橋下は、純粋だろ?」
「………」
担任も、クラスメートも、誰もが黙った。
沈黙が続く中、私は左側からジョウの視線を感じていた。
ジョウ、私はジョウのものだよ?
「…私…」
立ち上がると、担任を含む全員の視線を集めた。
鼓動が速いけど、大丈夫。
「私、処女だし!!」
叫ぶと、教室から飛び出した。
途中、美緒の声が聞こえた様な気がしたけど、今はごめん。