「ジョウ!おはよう。どうしたの?」
「おっす!迎えだよ、迎え!」
そう言って、私にいつものヘルメットを渡す。
「どうした?」
「ジョウ…、聞いた?先輩達が…」
「あぁ…」
「でもね、私、負けないよ!誰も振り向いてくれないかもしれないけど…ジョウは違うでしょ?」
「当たり前!!」
「ありがとう…」
ジョウの後ろに跨がると、ジョウはバイクを出した。
まだまだ蝉は居なくならないけど、それはそれで良い。
蝉の寿命は、短いんだから。
―橋下だ…
―よくやるよな…あいつも。
駐輪場でジョウがバイクを停めている時、周りの人達はヒソヒソと何かを話していた。
唇を尖らす私を見て、立ち上がったジョウは両手で耳を塞いだ。
「聞こえねぇ!」
「…うん!」
「行くぞ!」
ジョウと手を繋いで校舎に入った。
学年や階を関係泣く、ヒソヒソという声は絶えない。
俯きそうになる私を、一生懸命引っ張るジョウ。
「大丈夫か?」
「…うん」
「ホントかよ。日芽、下を向いたらダメだぞ?」
「…うん…」
言われた通り、顔を上げるとジョウは笑った。
「泣きそうじゃん!ほら、笑って」
「…いひひ」
「あはははっ!!日芽、可愛いー!!」
―キーンコーン…
周りの人達の声より、先輩達の視線より、一番嫌なものが響いた。
「じゃあな…」
予鈴が鳴った為に、ジョウはずっと繋いでいた手を離した。
棟が違うのに…ありがとう…ジョウ。
…強くなるよ。