―ピロリン…



その夜、部屋で勉強をしていると、携帯が鳴った。



「…もしもし?」


『日芽、大変!!』


「え?なに……?」



かけて来たのは美緒で、とても焦っている様だった。


私は、携帯の音量を少しだけ下げた。



『今日、先輩達に何かやられた?』


「…うん。でも、やられる前に、ジョウが助けてくれたの」


『………』


「…美緒?」



黙り込む美緒からは、泣いているのか嗚咽が聞こえた。



『…その先輩達が、学校中に日芽の有りもしない色んな噂、流したらしいの…』


「…ホント?」


『…うん。さっき、仲の良い先輩に聞いた。だから、明日…学校行くの、覚悟した方が良いかも…』


「……そっか…」


『日芽!私、日芽の親友だよ!困ったら、私を頼って!相談、何でも聞くよ!?』


「…ありがとう」



美緒は、どこまで優しいんだろう。


平然を装っていたけれど、電話を切った瞬間に涙は溢れた。


拭っても拭っても、幾度も頬を伝う涙。


これを期に、強くなれると良いな…。



「……ん…?」



気付けば、私は机に突っ伏せて寝ていて、既に朝だった。


来て欲しくなくても、次の日は必ずやって来る。



「日芽、どうしたの?その目…。学校で何かあったの?」



重たげに腫れる瞼を見た母親は、何度も何度もどうしたのと訊いて来る。


うっとうしく感じた私は、何でもないと言った。



重い足取りで家を出ると、私の気持ちを取り払ってくれる人が居た。


いつもの様に、バイクに跨がって、ヘルメットを被って。