「日芽、席此処なんだろ?」
そう言って、ジョウは窓際の二番目を指差す。
「うん。今日ね、此処からジョウが寝てるの見えたよ」
「まじかよ!」
あははと笑い合う。
ジョウに、あの時撮った写メを見せてあげようかと思ったけど、やめた。
あれは、私だけの秘密の写メ。
「これからは、お互い授業中でも見れんな!」
「うん!」
暫くしてから教室を出ると、クラスメートの数人とすれ違った。
俯く私とは違って、ジョウは握る手の力を強めた。
「また原チャリ?」
「遅刻しそうになったら原チャリ!余裕だったらチャリ!」
まだまだ夏の日差しを浴びながら、ジョウは私の鞄を椅子の下に入れた。
そして、ヘルメットを渡す。
「ジョウって凄いね。色んな免許持ってて」
「二つしか持ってねぇよ!」
にっこりと微笑んだジョウを見てから、バイクに跨がった。
もう、スカートだからなんて気にしない。
バイクに乗った時特有の沈黙や、運転するジョウの後ろ姿とか。
私にしか分からないものが沢山ある。
風を受ける気持ち良さだったり、ジョウから香る香水の匂い。
此処の位置だからこそ、感じられる素晴らしさ。
「日芽ん家、案外近いのな」
「バイクだからだよ」
ジョウにヘルメットを返すと、ジョウはポケットから何かを出した。
「家入ったら見て」
「うん」
そして、手を振るとジョウの姿はあっという間に見えなくなった。