「すみませーん」



適当に返事をして、先程配られた夏休みを振り返ってというプリントを書き始めた。


夏休みは、臨時登校日のことが強く残ってる。


花壇に座って、ジョウに好きだって言われたこと。


凄く嬉しかった。



「橋下、お前、橋本と付き合ってんの?」



前の席の男子…確か、杉山。


そいつが振り返って、そう言って来た。


若干、周りの席の人も私の方を向いている。



「…何で?」


「始業式のあれ見たらねぇ!やっぱり、気になっちゃうじゃんか」


「そうそう!橋下、ジョウみたいなタイプが好きだったん?」


「…よく分かんない…けど、付き合ってるよ」


「どこが好き?」



プリントも書くのも忘れて、私は周りの人達と話し込んでいた。


こんなに人と話したの、初めて。


ジョウパワー?



―キーンコーン…



チャイムが鳴り、下校時刻になった。


鞄を机に置き、8組の方に顔を向けてみるとあの席にジョウは居なかった。


もう帰ったのかなぁ、何て考えて居ると、突然腕を引っ張られた。



「…何か?」



ジョウかと思った自分がバカだった。


私を囲む様にして、二・三年の先輩達が腕を組んで立っていた。


クラスの人は、見て見ぬ振りをして次々と教室から出て行く。



「ちょっと良いかしら?」



一番ケバい人に腕を掴まれ、私は先輩達に囲まれて教室を出た。


廊下をゆっくりと歩いていた時、先輩達の横をエナメルを揺らして走るジョウが通った。


当然、背の小さい私は先輩の間から見えるわけもなく、ジョウは私の教室に入ってしまった。