花屋敷とは、東京の浅草にある遊園地。


何故ジョウがそこに行きたいのか分からないけど、ワクワクした。


信号で止まる度に、ジョウは振り向いてにかっと微笑む。


私は、ずれるヘルメットが気になってしょうがなかった。



「着いたぞー!!」



着いた時には、ヘルメットは私の頭にはなかった。


ジョウに笑われながら、ヘルメットを取ってもらってバイクから降りた。



「…浅草だ!」


「おう。はい、鞄!」


「ありがとう」



ジョウは、行くぞと言って私の手を取った。


私は一瞬よろけながらも、ジョウの隣を歩いた。


そして、横を歩くジョウを見上げると、彼はニコニコと楽しそうだった。



「…色んなのあるな!」


「ジョウ?」


「うん?」



前に進んだジョウが振り向く。


私は、ジョウを真直ぐに見て首を傾げた。



「…何で此処に連れて来たの?」


「………」



力が抜けた様に、ジョウの肩が下がったのが分かった。


暫く、沈黙が続く。



「日芽と、二人きりになりたかったから!」



沈黙を破ったその言葉は、世界に風を吹かせた。



「それに、俺は此処じゃなくて、もっと静かな処が良いな」


「………」


「…日芽?」


「…ありがとう…」



ジョウは、元気がない私を気遣ってくれたんだね。