玄関には、鋭い目をした父親が仁王立ちをしていた。
「…チィース」
頭を下げながら、サンダルを脱ぐと拳骨を食らった。
「…痛っ!!」
「お前は、またチャラチャラ男と!」
「…見てたの!?」
「関係ないわ!」
脱いだサンダルの、ヒールの部分で、父親を殴ってやろうかと思うくらい苛々していた。
わざと音を立てて階段を上ると、パジャマを取ってお風呂に向かった。
「…日芽?」
台所から、母親が顔を出したけど無視をして脱衣所に入った。
「……ムカつく」
高校、夏休み、彼氏、デート…
色んな単語は、私にとって青春と感じられるのに、両親にとったら娘の危機みたい。
お風呂に入ると、自棄になって頭を洗った。
浴槽にも飛び込んで入ると、肩まで深く浸った。
「…しあわせ?」
まだ、その言葉は分からないと思う。
お風呂にある、アヒルのオモチャを鳴らして遊んでいた。
今は、誰の顔も見たくない。
十分に暖まり、お風呂から上がると鼻歌を歌いながら二階に上った。
「……うそ…」
携帯を確認すると、着信と受信の件数に驚いた。
【譲】の名前が、ズラリと並んでいる。
どれだけ彼が心配していたか、家の前に居たかが分かる。
「……ありがと…」
呟いてから、明日の為に早く眠りについた。