「…美緒…」
振り返ると、そこには首を傾げたままの美緒が居た。
「…どうしたの?日芽がこっち来てるの、珍しいね」
「………あのね、」
噴水の石段に座って、辺りが暗くなる中、私はジョウについて話した。
美緒は、頷きながら話を聞いてくれた。
「…譲君を、信じるしかないよ。両想いなんだからさ!」
にっこりと微笑んだ美緒を見て、初めて気が付いた。
瞼が腫れていること。
「…美緒は、仁君と何かあった?」
「………」
訊くと、案の定、美緒は俯いて涙を浮かべた。
「……フられちゃった」
「………」
「…バカだよね!あんな浮かれて…。騙されてた……日芽は、知ってたんでしょ?」
「…え?」
顔を上げ、真直ぐに私を見る美緒の目は、真剣だった。
「…私が告られたって言った時、違う意味で驚いてたっぽかったから……」
「…ごめんね」
「…ううん。ありがと」
今、此処で美緒に会えて良かったって思った。
美緒の恋も、私の恋も、誰かの恋も…相談しなければ、終わってしまう気がする。
「……ジョウ…」
美緒と別れてから、来た道を戻ると家の前にジョウが居るのを発見した。
レンガで作られた門の支柱に寄り掛かり、携帯をいじっている。
私は、ゆっくりとジョウに近付いた。
「………」
ジョウが私に気付き、自分の足で立った瞬間、私は俯いた。
「…日芽!お前っ…」
「………」
正直、叩かれるかと思った。
凄い、怒られるかと思った。