「何やってんの?」


「……ジョウ!」



今、私を叩こうとした先輩が慌てて手を下ろした。


ジョウは怪訝な顔で、先輩達を睨んでいる。


初めて見るその表情に、少し怯んでしまった。



「先輩だからって、後輩にそんなことして良いのかよ」


「違うよ、ジョウ!これは、ジョウのことを思って…」


「要らねぇ」



即答でそう言うと、私の腕を掴み、校舎の中に入った。


後ろ姿からも、ジョウが怒っていると分かる。



「…ジョウ、ジョウ!」


「………」



幾度か名前を呼んでも、ジョウは返事をしない。


…今、気付いた。


ジョウは、三年の階に向かっているってこと。



「瑠奈!」



大掃除をしている教室に入ると、大声でその名前を呼ぶジョウ。


顔を上げると、札には3-2と書いてあった。



「…ジョウ?どうしたの?」



そこに来たのは…多分、瑠奈先輩。


仁君が話していた通り、短いスカートから伸びる白い足はすらりと長い。


背も、ジョウより少し低いくらい。



「お前、言ってねぇよな…」


「…何が?」


「お前と俺は、付き合ってねぇ」


「…何言ってんの?分かってるよ、そんなこと。ジョウは好きな人、居ないもんね」


「…それだけだ」



言うと、ジョウは走って行ってしまった。


残された私は、瑠奈先輩に軽く頭を下げて背を向けた。



「待って!」



呼び止められ、踏み出した足を元に戻して振り返った。