改札を抜け、階段を上って行った二人をぼーっと眺めていた。



「日芽、傘倒れてる」


「………」


「…日芽?」


「…美緒は良い子だよ」


「………」


「…美緒は…良い子、だよ?」


「…ごめんな」



気付いたら、私は泣いていた。


そして、駅の真ん中にも関わらず、ジョウの胸の中。



「……美緒、は」


「…分かってる」



後で、美緒に電話しよう。



「雨、止んだなー」



暫く駅に居た私達は、橙色の空の下を歩く。


瞼が腫れてしまい、狭くなった視界でも空を仰ぐ私。



「プール、行きたかったな…」



呟くと、前を歩くジョウは振り返り、にっこりと微笑んだ。



「また今度、二人で行こうぜ。なんなら、美緒も誘って三人で!」


「…うん!」



小走りでジョウの横に並ぶと、彼は無表情だった。



「…仁には、俺が言っとくわ。ただ、付き合うなとは、言えねぇけどさ」


「…うん」



頷くと、ジョウは吹き出して笑った。



「すっげぇ目腫れてんな!」


「うるさい!」


「…ちゃんと冷やしなさい」


「…うん」



気付けば、いつも私の家の前に居る。


ジョウが、周りを見えなくする魔法を使っているみたい。



「バイバイ…」