【高校一年、夏休み前】



「ねぇ、何か状況変わった?」



二人しか居ない教室の中央の席。


そこに座り、ネイルを施している美緒。



「なにもー。やっぱり、私は平凡な女なのです」



そして、私は窓から活動中の部活を、風を受けながら眺めていた。



「…でも、メルアド訊いて来たの、向こうなんだよ。何もないとかない」


「平凡な女だと気付いたんだよ。メールは頻繁に来るけど」


「…怪しい…」


「……もう、夏休みだねぇ」



風によって靡くネクタイ。


美緒は自分で買った、ピンクと赤のリボン。



「うん。いっぱい遊ぼうね!」


「当たり前ー!」



わははと笑い合う。


そして、暫く経ってから教室を出た。


時間帯のせいもあるのか、廊下には誰一人の気配もなかった。



「何か…良いね」


「…うん…」



静かな廊下に佇んでみる。


吹奏楽部の楽器の音、運動部の声援……


学校の全ての音が、この廊下に響いている様な感覚だった。



「学校って感じ」


「だよね!」



また顔を合わせて笑い合う。


美緒は、私の全てを受け入れてくれる友達。