「何泣いてんの…?」


「………」



翔之には分からない。


本当に好きだったから。



「もう良いよ…何でついて来るの…?」


「別に。理由はない」


「…ムカつく」



そんなことを言っても、翔之は怯まずについて来る。


もう少しで私の家なのに。



「なぁ、話しない?」


「話すことない」


「オレはある」


「…ちょっと!」



無理矢理私を引っ張る翔之は、少し怒ってる様に見えた。


だから、私も抵抗しないで翔之に引っ張られてた。



「座って」


「………」



連れられて来たのは、小さな公園のベンチ。


翔之と少し間をあけて座った。


夏に一歩近付いた気候は、少しむしむしする。



「で、何でキレてるわけ?」


「…担任がうざいから」


「ホントかよ」



不機嫌なのは翔之も同じなくせして、欠伸を連発してる。


…原因は私だけれど。



「彼氏が消えた」


「…は?」


「それだけのこと」



言うと、何故か翔之は黙り込んだ。


欠伸を連発していたのに、口を尖らせて何か考えてるみたい。



「…それって、橋本譲って人?」


「…え?」


「結構有名だよな。カッコ良いとか、染めたとか居なくなったとか」


「………」


「お前らカップルも有名だった」



翔之は制服のポケットから携帯を取り出した。


…この人、よく分からない。