私の心はどんよりと、今日の天気に簡単に負けてしまう様な、もろいものになってた。


気がつけばいつもジョウが隣に居て、明るく笑ってたから。


元の自分に戻って、何でこんなに落ち込んでいるんだろう…。



「日芽、何処行くの?」


「中庭!」



放課後、美緒と途中で別れて、あの人が居た中庭の桜の木へ向かった。


ホントに居るか分からないけど、一応行ってみようと思う。



「…あ…」



中庭の真ん中にある桜から、桃色の花びらが昨日よりもたくさん舞っていた。


木の近くは真ピンクで、桃色じゅうたんみたいで可愛い。



「…あのー、居ます?」



今更だけど、こんな大きな木に上って寝れるなんて、凄いことだよなぁ。



「…居ない…よね…」



呟いて木に寄り掛かると、上からカサカサという音が聞こえて来た。


そして、私が上を見上げる前に私の前に彼が現われた。



「おっせー…」


「…ごめん、なさい…」



何で謝ってる自分が居るのか、理解出来なかった。



「見せたいものって?」


「んなもんねぇよ」


「…さよなら」


「ちょ、待てよ」



手首を掴まれて、振り返ると彼は何故か真面目な顔をしてた。



「今の、キムタクっぽくね?」



一気に顔が緩んで、可愛い笑顔になった彼。



「全っ然」


「ふはっ」



吹き出して笑い出した彼は、ジョウとは全く違った印象だと思った。



「名前は…?」


「…翔之!」



笑顔の彼が、太陽に見えた瞬間。