「…そうじゃねぇよ」


「やだっ…行かないで!苺のピアス…ちゃんとあるよ!」



服からピアスを取って、必死にジョウに見せた。


でも、ジョウには遠過ぎて見えてないよね…。



「…ごめんな、日芽…」


「…やだーーーー!!!!」



視界が涙で滲んで、前がよく見えないよ…。


でもね、前にあった筈の金髪の頭が引っ込んだのは、ちゃんと見えてたよ。



「きゃっ!!」



段差に気付かなかった所為で、転んでしまった。


やっぱり、道行く人達は、私のことを見てる。



「…うっ…ジョウ…」



いつの間にか、ジョウが乗っていたバスは見えなくなってた。


そして、雨も降って来ていて。


膝から血を流して、傘も差さずに雨に打たれて泣きじゃくって……。



「…日芽、」


「…美緒……」



商店街の道の途中で、傘を差した美緒に会った。


美緒は息が上がっていて、ジョウを探してくれたんだって直ぐに分かった。



「…譲君、居た…?」



申し訳なさそうに、私の顔色を伺う美緒。


私は、小さく首を横に振った。



「…ごめんね…探してくれたのに…」


「ううん…」



それを最後に、私達は沈黙した。


仁君、今何処に居るんだろう…。