その後、私は友美ちゃんと別れて桜の木の下に向かった。


美緒と仲直りをするために。



「あ……」



遠くからでよく見えないけれど、私の目に写っているのは多分、美緒。



「…日芽…」


「ごめん、遅くなって」



言うと美緒は、静かに首を横に振った。



「美緒、あのね」


「日芽」



“ごめん”って言おうとした瞬間、遮られてしまった。



「…今まで日芽と居た時、凄く楽しかったし…これからも、ずっと一緒に居るんだろうなとも思ってた……でも…」


「………」


「もう…ダメだって、思った…」


「え…?」



春に近付いた風が、私達を通り過ぎて行く。


美緒は俯いて泣いていて、私は唯、呆然と立ってるだけ。



「…仁君とも…もう…終わりだよ…良いよね、日芽は」


「…待ってよ…ねぇ!」


「……バイバイ」



美緒は、私を置いて行ってしまった。


何でこうなるの…


違うよって言えば、何か変われた…?

美緒に“ごめん”って言えば、許してくれた?


そんな筈ないのに…。



「…うっ……馬鹿…」



しゃがみ込んで、嗚咽を繰り返してた。


此処には誰も来ないから、子供みたいに泣いてた。


今頃になって、バスケで転んだ時の怪我が、痛み出して来たから。






―嘘。