いつまでも落ち込んでちゃだめだよね。

翔は東京で頑張ってください。
辛くなったらいつでも戻って来て下さい。
そのときは笑顔で迎えるから。

あたしもこの地で頑張るから・・・



キーンコーンカーンコーン・・・


あたしは放課後まで上の空だった。

「裕子ー・・・おーい」

「はっ!もうHR終わったの?」

「とっくに終わったよ!・・・何?翔さんのこと?」

「あはは、うん、まあ・・・」

「裕子が落ち込んでちゃだめだよ。気持ちはわかるけどね。

「そうなんだけど・・・」


ブ−ブーブ−・・・

あれ電話?

「・・・はい、もしもー・・」

「よっ!裕子!元気か?」

この声は・・・

「翔!?」

愛里が驚いた顔であたしを見た。そしてすぐにニコッと笑った。

「バ・・・バンドはどうなの?」

そっけない口調で言った。ああ、ほんとあたしって可愛くない−−−・・・

「デビューできるかもしれないんだ!」

・・・え?




・・・え!?

「ちょっ、なにそれどういう・・・、ってか話が早過ぎない!?」

「な!上手い話だよなー。いや、路上ライブしてたらさー、たまたまどっかの音楽会社のプロデューサーに声かけられてよー、明日スタジオで改めて演奏するんだ。」

呆然としたあたしの表情から何かを悟った愛里は心配げな顔になった。

「そっか・・・す、すごいじゃん!頑張ってきてね!」

「おう!ありがとな!」

電話越しからでも翔の嬉しさが伝わってくる。
でもあたしは何故か、素直に喜べない。
それだけ言って電話は切れた。

「翔さん、どうしたの?」

「デビューできるかもしれないんだって。」

愛里はまた驚いた顔になり、真剣な顔になった。

「裕子・・・」

愛里はあたしが何考えてるかわかってる。

翔が



翔との距離が


少しだけ遠くなった気がした。