当時中学一年生だったあたしは
学校が終わると翔の帰り道にあるベンチで
翔が来るのを待っていた。

翔は女の人と歩いて来ることは一度もなかったのが今も疑問だ。
誰が見てもかっこいいのに彼女いないのかな・・・って。
本当はいたのかもしれない。
あたしがいることに気を遣っていたのかもしれない。
だけどあたしは毎日翔の帰り道のベンチに座っていた。
翔が女の人を連れて来るのを多少怖がりながら・・・
三年間皆勤を見事達成した。


今となっては懐かしい。
きっとあたしは次の翔が通っていた高校で翔の面影を探しながら毎日を過ごすのだろう。

翔は真っ白な白紙に自分なりに明日を描いて。
あたしはそれを必死で探すの。
あたしも翔のように自分の道を見つけなくちゃ。


早く


早く


翔と肩を並べられるように・・・




「おっ!裕子!今日は早いな!」

「徹!」

こいつはクラスメートの伊谷徹(イタニ トオル)。最近翔のバンド・モッシュピットにハマって意気投合した仲だ。

「翔さん昨日行っちまったんだろ?最後に会いたかったなあ・・・」

徹は翔溺愛だ。

「さみしくなるね・・・」

「だなー。ギター教えてもらいたかったのになー。」

「成功するまでは帰らないとか言ってたけど。」

「まじかよ!やっぱ翔さんは違うな〜。俺だったらきっと・・・」

「ホームシックで泣きながら一日後に帰宅。」

「そうそう・・・っておい。」


翔がいなくなった翌日、翔がいなくなったこと以外は何も変わっていないのに
なんだか少し物足りない。
そのうちこの生活にも慣れるときがくるよね。

「裕子おはよう。」

「あ、愛里!おはよう。」

「・・・?何か元気なくない?」

「そうかな?」

そのとき徹が乱入してきた。

「あれだよ。こいつ翔さんが東京行っちゃって寂しいんだ。」

「そういう徹こそ!」

「そっかあー。翔さんすごいねー。きっと有名になって帰ってくるよ!」

「だよな!・・・っと、授業遅れるぜ!いくぞ。」

『うん!』