なんか、変。


嫌みや、悪口。
バカにしたような言葉。

それをしないなんて、アイツじゃない。


こんなの、アイツらしくない。




『…いつもみたいに、嫌み言わないの??』


自分でも、ちょっぴり後悔。


らしくないアイツは、なんだか違和感があって。


…意味不明なこと聞いてしまった。




アイツはあたしの質問に珍しく驚いた顔をしたけど、すぐにいつも通りすました顔をした。



「何??嫌み言って欲しいわけ??」



そう言ってアイツは、プイッと顔を黒板の方に戻してしまう。



その横顔は、なんだか切なく見えて…。


ズキン。


胸が痛んだ。





……って!!


なんであたしがアイツのために、胸を痛めてるわけ!?


我にかえったあたしは激しく後悔。



あーもう、あたしのバカバカ。


ここはアイツの苦い顔が見れて、喜ぶところでしょうが!!


何、アイツに同情してんのよ!!





アイツがらしくないのなんて知らない!!


むしろ、嫌みとか言われなくって清々するわっ!!




気を取り直したあたしは、今度こそ真面目に授業を受けようと机に向き直った。







この時のあたしは知るはずもない。




この時から、

あたしとアイツの関係は、


少しずつ変化していったんだ――。











なんか、おかしい。


いつもの帰りの昇降口。


いつも通りアイツが横にいる。


それはいい。


だけど、横にいるアイツが…、


今日は何も言ってこない!!



おかしくないですか??


妙に変な空気が流れてるし。


居心地が悪くなったあたしは、口を開いた。



『さっきから、なんなの??』

「あ??」

『なんで何も話さないわけ!?』


どうせ、「着いてくるな」って言っても着いてくるんでしょ??


それはもう諦めたわよ。




でもさ、どうせ着いてくるなら、何か話してよ。


気まずいったらありゃしない。



「…別にいいじゃん。」


アイツはそうめんどくさそうに言うと、あたしの前をスタスタと歩きだした。


こっこいつ…。


いつもに増してムカつく!!



あたしは早歩きのアイツを、小走りで追っかける。


別にこのまま先にいかせてもいいんだけど…。


なんとなく、後味悪いし、ね。






「舞ちゃん。」




突然、声をかけられた。


あたしはもちろん。


アイツも足を止めて後ろを振り返る。



「ちょっと、話があるんだけど…。
いいかな??」



あたしを呼び止めた人物。


それは紛れもなく、


あたしが大好きな直也先輩。




「あっもしかして、一緒に帰る用事があった?」


あたしの後ろにいるアイツを見て、申し訳なさそうな顔をする直也先輩。


あたしは誤解される前に慌てて訂正した。



『違いますっ。勝手にアイツが着いてきただけなんで!!』



「でも…。」

『本当に大丈夫ですから!!』


そう言いながら、あたしはたまたま近くにあった喫茶店に行くように、先輩の背中をグイグイ押した。


せっかくの先輩と話すチャンスだもん!!


無駄にはできない!!




「えっと、陵くんだっけ??その子はいいの??」

『いいんです!!
ねっ陵。あたしたち、ここで喋ってくるから。
先帰ってて。』


いつもは絶対に見せない微笑みをアイツに向ける。


…邪魔すんなよ、と言う意味を込めて。





先輩があたしに押されて、半分強引に喫茶店に入った。


その時だった。







「舞っ」








かすれたようなその声と共に、腕を後ろに引っ張られた。





思わず、足を止める。







『…何??』



あたしを止めたのは、アイツ。



あたしがあからさまに顔をしかめると、アイツはハッと我に返ったような表情をした。




「…なんでもねぇ。」

『ふーん。』



なんだそれ。


あたしは特に気にとめることなく、先輩の方に向き直ると、喫茶店に入った。






だから、気づかなかったんだ。



アイツが悲しそうな顔をしてたことに。