私は、蒼の温もりを感じながら、ゆっくりと話を始めた。


「中3の…卒業間際にね、今まで仲が良かった友達とケンカしてた工藤を見つけたの。」


そのケンカの理由は、未だにわからない。

でも、優斗に一方的に殴られていた大地を庇った私。



「優斗!何やってんの?!大地…大丈夫?」

「…大丈夫だ、これくらい。」


大地の口からは血が流れていた。

口の中が切れている事はすぐにわかった。

私は、保健室に大地を連れていこうとした時…優斗は「まだ、話しは終わってない!」といって、大地の腕を掴んだ。


「なんの話よ!話なんかしてるように見えない!今は…それよりも手当しなきゃ!」

「美月には関係ないだろ?!」


そう怒鳴って、私を突き飛ばす優斗。


「な…話しがしたいなら、会話で片付けなさいよ!」

「うるせぇ!男には男のやり方があるんだよ!」

「信じらんない…怪我してる友達がどうでもいいって言うの?!」


頭に血が上った私は、優斗の頬を思いっきり叩いて、大地に駆け寄った。


「大地…。掴まって?」

「…結局は…そういうことかよ…。」


そう呟いて、優斗は私たちに背中を向けた。

その後、傷の手当てを受ける大地に、話しを聞いても、こんなことになった理由を話そうとはしなかった。


優斗がケンカしてる。

そう、クラスメイトたちが騒いでいる事は何度もあったけど、いつも優斗は自分からふっかけたりはしなかった。

わかっていたのに、きちんと事情も聞かずに暴力をふるってしまったのは私。


次の日から、優斗は学校に来なかった。

ずっと謝りたくて、電話やメールを送り続けた。

でも、何日か後にはどちらも繋がらなくなって、家にも優斗はいなかった。

一体どこで何をしているんだろうと、心配していた。


結局、卒業式の日…。

ようやく登校した優斗を捕まえて、ひたすら謝ろうと思っていた私。


「優斗!」

「…」


廊下ですれ違った私の声に、優斗は何も反応を示さなかった。