蒼がここまで歩み寄ってくれてる。

大丈夫。

そう、自分に言い聞かせた。


「工藤はね、前の学校のクラスメイト…アイツは、退学になったって言ったけど、私は、アイツのせいで転校する羽目になった。」

「どういうこと?」

「……私ね、アイツと…話の中に出てきた、竹下ってアイツの友っ…達に……」


急に涙がこみ上げてきた。

そんな私を優しく抱きしめてくれる蒼。


「ゆっくりでいいから…」



アイツ等が退学になった話は、転校すると先生に伝えた時に聞いた。

でも、正直…あの校舎にいるだけで吐き気がする。

思い出したくない記憶が蘇る。

時間が解決してくれるのかもしれない。

でも…それまでにどうにかなってしまいそうだった。


中学の時までは、仲が良かったと工藤優斗と竹下拓真。

気が短くて、喧嘩っ早くて…

それは昔から変わらなかった。

高校に進級してから、クラスが離れたこと、私が部活を辞めたこと…。

相馬大地のこともあって…なんだか疎遠になってしまった。

見た目のキツさも加わって、「怖い人」というイメージが先行。

中学からの友達づきあいは竹下だけになっていたように感じていた。


優斗…。


あの時から、私は優斗に嫌われてしまったんだろうか…。