え?

気づかないうちに涙が流れていた。

その涙を拭う蒼の手。


「…違うかな?」

「え?」

「泣いていいよ。」


そう言って、私を抱き寄せる。

泣いていたら、蒼が困ってしまうと思いながらも、止まらない涙。

あったかい…

なんでだろう。

この間もそうだった。

蒼の体温は気持ちがいい。


「このままで…まとまらないかもしれないけど、聞いてくれる?」


私の頭をなでる。


「ホントに、無理しなくていいんだからな。」


私は黙って頷いた。




「……まず、蒼に謝らなきゃいけないことがあるの」

「何?」


蒼は首を傾げて私を真っ直ぐ見つめる。


「転校した理由…聞いたよね?」

「あぁ。」

「親の都合って嘘なの。」


転校したその日に、蒼についた嘘。

これから、本当のことを話す。

何から話せばいいんだろう。

なんとなく、蒼は感づいていたんだろうな。

普通、親の都合で転校したなら、一人暮らしなんてしてるはずないし。

手をギュッと握っていた。

それが、私に勇気を与えてくれた気がする。

『気にするな』って、言ってくれてるような気すらしてくる。