「ふふ…やっぱり、お父さんみたい…」

「うわ!何それっ!傷つきましたけど!」


少し、私との距離をとり、顔を覗く蒼。


「やっと笑った。」


蒼は優しく笑いかける。


「落ち着いた?」

「…うん。ありがと。」


優しく涙を拭う蒼。


「んじゃ、帰ろうか!」


蒼は、私の手をとり、駅に向かって再び歩き出す。

金曜日の夜の街中…。

人の往来の中、きっと視線だって痛かっただろう。

それでも、ずっと抱きしめてくれてたんだ…。

ありがとう。

蒼は優しいね。

巻き込んでしまったにも関わらず、原因も聞かないでいてくれた。

…言わないとフェアじゃないのかな。

蒼の背中を眺めながら…何が正しいのかわからなくなりそうだった。


「じゃ、俺帰るから、ちゃんと寝ろよ!」

「あ…うん……」

「そんな顔すんなよ…」


自分が、どんな顔をしていたのかはわからない。

でも…一人になることが、ものすごい不安で…。

思っていた事が伝わってしまったんだと、私は俯いた。

こんなの、ただ心配掛けるだけ。

事情を話す勇気もないくせに、甘えるだけはできるなんて都合よすぎだ。


俯いたままの私の頭をクシャっとなでる。


「お邪魔してもいいの?」

「え?」

「美月が俺でいいなら、落ち着くまでそばにいるけど?」


どうしても、一人でいたくなかった。

あの時の記憶が戻ってきそうで…。


気がつくと、黙ったまま頷いていた。