「お父さん!ちゃんと送って帰れよ!」

「お父さんじゃねぇし!」


さっきの話以降、蒼は私のお父さんで定着していた。

私を見る目が、娘を心配するお父さんのよう…。

そう、健くんが言ったのがきっかけだった。


「蒼、大丈夫!一人で帰れるよ。」

「何言ってんだよ、フラフラだろ…」


いい具合に酔っぱらってる。

千鳥足って、こういうことを言うのね…。

でも、ちゃんと記憶はある!

ちょっと嬉しく思いながら、フラフラと歩く私。

蒼は『支えるから…』と断ってから私に触れる。

触れられるのに抵抗があること、酔ってても忘れないでいてくれてるんだ。

肩を抱かれたような体勢で、家路へ。


「蒼、寒くない?」


パーカー奪っちゃったから。


「お前、暖かいから大丈夫!子供体温?」


蒼は、ニコッと嫌味なく笑い、私の体を少し引き寄せる。


「ひどっ!また子供扱いした!」

「仕方ないだろ?」


そう言って笑う蒼の笑顔を見て、ドキンと心拍数が上がったように感じた。

いつものビクつく感じではないのは何故だろう。

お酒のせい?


「怖くない?」

「……」


少し怖いけど…一人でまっすぐ歩ける自信もないし…

でも、ちょっと怖いよなぁ。

そんな事を考えていた時。


「美月?」

「ほぇ?」


突然、呼ばれてゆっくり振り返る。


「………工藤」


一気に血の気が引くのがわかった。

なんでこんなところで会っちゃうんだろう。

膝がガクガクと震え出す。