「あ、あなたが美月ちゃん?」

「はい!青柳美月です!」


勢いよく立ち上がり、頭を下げる私。

と同時に、冷たい感触。


「バカっ!大丈夫か?」

「ふぇ?」


立ち上がった時に引っかけたらしく、

カシスオレンジ色に染まった白いシャツ。


「ごめん、蒼。」

「着替えて洗ってこい!取れなくなるぞ。」


そう言って、脱いでいたパーカーを手渡される。


「え、でも、安物だから!」


受け取りを拒否してみたものの、蒼はもちろん引いてはくれず、トイレでシャツを洗うことに。


「あはは!聞いてた通りのボケっぷりと、相原の過保護っぷり!」


柊さん…あなたは、私の事をどういう風に聞いているんでしょうか…。

蒼は『うっせぇ!』とだけ言って、私の服を拭いてくれていた。

その後、店員さんも駆けつけ、テーブルの上もキレイにしてくれた。


「取れた~?」


私が、トイレに引きこもって少しすると、柊さんが様子を見に来てくれた。


「取れない~。」

「やっぱり、カシスは強力かぁ~」


私の手元を見ながら、のぞき込む柊さん。


「柊さん、いいですよ?飲んでて下さいよ~」


二人で見てても仕方ないし、どうも取れそうにない。

帰ったら、漂白してみるかぁ~。

実はお気に入りだったこのシャツ。


「あれ?名前知っててくれたんだ~。香澄でいいよ!タメでいいし!」

「ありがとう、香澄さん!もう、すぐ戻るから!」

「『さん』いらないよ!美月!んじゃ、向こうで待ってるね!」


そういってトイレを出ていった。