「飲んだら、移動しようか」

「え、でも…」

「遅れてくる奴が悪くない?」


時計を確認すると7時15分。

待ち合わせの時間は過ぎていた。

お店は、事前に蒼が決めていたらしく、みんなに先に行く旨、連絡をしていた。


少し歩いて、目的のお店に到着。

『予約席』と札の置かれたテーブル席に案内され、私たちは向かい合って座った。


「あんまり可愛いのも困りもんだな~。」

「え?」


蒼は何の脈絡もなく、そんな事を言い出して。


「今までにもあっただろ?ああいうの。」

「…今まで?なかったよ。こっちに来てから初めて。」

「そうなの?意外…」

「あ…仲が良かった子とは、家が近かったから…。街中で一人になる事もなかったし。」


そう言われてみて初めて気づく。

そうだよね…一人で待ち合わせの場所に行った事なんてなかった…。

必ず、家に迎えに行ってから出かけてたから。


「そっか、その子と離れちゃって残念だな。」

「うん…まぁ…」


私の曖昧な返事を聞いて、首を傾げる蒼。


「ご注文はお決まりですか?」


ちょうどいいタイミングで店員さん登場。

とりあえずドリンクだけを注文することにして、食事はみんながそろってからと言うことで、もう少し待ってもらうことにした。


「一杯くらい、いいだろ?」


そう言って、ビールを二つオーダーした。