「美月…」


心配そうに呟く蒼。


「ごめ…だいじょ…ぶだから」


泣き顔を見られまいと、慌てて顔を隠した。

正確には、後ろを向こうとしたときに、

蒼が私の高さにあわせて、屈んでいたので、

背を向けることも出来なかったんだけど。


「…ごめんな……もう、大丈夫だから。」


なんで、蒼が謝るんだろう。

蒼の優しい手が涙を拭う。

手が触れた瞬間にピクっと反応する体を止めることはできなかった。


呼吸を整え、涙が流れないように上を向き、落ち着くように自分自身に言い聞かせていた。

視線の先には、冷たく輝く月が私たちを見下ろしていた。

ようやく落ち着きを取り戻した私に、蒼が『あったかいものでも飲むか?』といって、近くにあった自販機へ向かう。

その間も、さっきの奴らが戻ってくるんではとビクビク。

蒼の服を握りしめていた。


「はは!もう大丈夫だって!そんな不安そうな顔すんな?」

「あ、うん。ごめん。」


蒼の服から手を離し、差し出すコーヒーを受け取る。

変なの。

つい最近の事だった。

男の人が怖いと蒼に話したのは。

そのときは確実に…『蒼に触れられるのが怖い』と思っていた。

でも…

今、私……

自分から蒼のシャツを掴んでいて、それだけじゃなくて、側にいて欲しいと…

そんな事を考えてなかった?

花壇の脇に腰を掛ける蒼に続いて、私も隣に座った。