貼りだされているホールには早くも人だかりができていて、

今回は悪かっただの、関係ないだの、いろんな声が飛んでいた。


「ねぇ、今回トップだった青柳さんって例の転校生？」


え…。

すれ違う女子生徒の会話が聞こえてきた。

その声は蒼の耳にも届いたらしく、歩いていた足を止めた。

無表情で私に視線を落とす。


「あは…見に行く前に結果わかっちゃったね」

「マジ？美月ちゃんすげ～！」


坂下くんが、蒼の横で盛り上げる。


「マジかよ！くっそ～」


ワンテンポ遅れて蒼が悔しがる。

その場で足を止める蒼を坂下くんが『まぁまぁ…』と背中を押して前へ進める。

今回の学力テストは5教科。

500点満点で…

1位…青柳　美月　492点
2位…相原　蒼　　489点
3位…秋野　遥　　481点

点数まで発表されるのか…。

そう思いながら見上げていると、隣からは『3点…あと3点…』と小さな声が聞こえてきた。


「相原、2位～！」

「まぁ、それでも充分すげーけどな」


茶化す茜と、励ます坂下くん。

落ち込む蒼。

なんだか、私はなんて声をかけていいのかわかんないな…。

複雑な気分で、順位表を眺めていた。

蒼もだけど…秋野さんも頭いいんだ…。


「お、相原！丁度いいところにいた！ちょっと手伝え！坂下も！」


先生…タイミング悪いよ…。

悔しそうにうなだれていた蒼に担任が声をかけて連れて行く。

ため息をつきながら、私と茜は教室に戻る事にした。


「しっかし、相原の上を行くやつがいたとは…」

「たまたまだよ…マグレだって」


テストの点数に関してはあまり悪くなければ気にしない私にとって、

蒼がそんなにがっかりする気持ちがわからなかった。


「テスト終わってスッキリしたし！午後からは体育だし！ガンバろ～！」


午前中の眠気はどこに行ったのか、茜はウキウキした表情で教室に入って行く。