茜に詰められていたタイミングといい、なんだか気まずくて。

俯いたまま、挨拶もできずにいた。


「美月、おはよう!」


蒼は、優しく微笑んで挨拶をして、私の頭をクシャクシャにする。


{!」


反応しそうになる体を必死に堪える。


気をつけるって言ってくれたのに…。


「あ、悪い。」


私の反応に気付いた蒼は、私の顔を覗きながら、申し訳なさそうに謝る。

その隣で、茜は不思議そうにその光景を見ている。


あ…。

忘れていた訳じゃなく、蒼の癖なんだよね。


「もぉ…ぐしゃぐしゃじゃない!」


何事もなかったかのように、笑顔を作り、蒼に向ける。

自分の意識を違う方向に持って行きたくて…。

茜に知られてしまったら、多分…根掘り葉掘り聞かれてしまうから。


『みんながみんな怖いやつじゃない』の蒼の言葉。

蒼に対しての見方が変わったのは事実。

それでも、『男の人』が怖いのは変わらない。


「ははは!可愛いよ!」


そう言って、私たちに背中を向け、何事もなかったかのように階段を上がっていった。



今なんて?

また、可愛いって言った?!


立ち尽くしたまま耳まで熱くなっている。


「ちょっと~、何よ今の!ラブラブじゃん!」

「いや…えぇ?!」


茜に冷やかされたことよりも、蒼の言葉に驚くしかない私。

動揺しながら、ボサボサになった髪をなおす。


「何があったのよ!やっぱり付き合ってるんでしょ?隠したってわかるんだからね!」


何があったかなんて、私が聞きたい!

必死に否定しながら、茜を置いて教室に向かった。