ヤバい…なんか緊張する。

自分の心臓の音が聞こえる。

蒼の携帯番号を眺めて、どれくらいの時間が経ったんだろう。

えぇいっ!

女は度胸!

私は思い切って通話ボタンを押した。


呼び出し音がやたらと耳に着く。

ドキドキと心臓の音が聞こえる。


『もしもし?』

「あ…」


電話から蒼の声が聞こえた。

その瞬間…頭が真っ白になった。

「あの…」


私、何を聞くつもりで電話したんだっけ。


『もしかして美月?』


あ。

非通知で電話しておきながら、名乗ってすらいなかった。


「うん…」

『やっぱり。どうした?まさか電話くれるなんて…』


積み重なる数々の無礼にもかかわらず、受話器の向こうの蒼の声は優しかった。


「あの…」

『ん?』


蒼の声を聞いていると、昨日のあさの情景が脳裏に浮かび、顔に熱が篭るような感覚を覚える。


「えっと…」


自分から電話をかけたくせに、どうしても一言目が出てこなくて、パニック状態に陥る私。


『美月、今ヒマ?』

「え?」


私が何も言えずにいると、蒼からの突然の問いかけ。


「ん…っと、何もないけど…」

『じゃぁさ、1時間後に行っていいか?』

「え?」


突然の提案に、私が答えずにいると、『じゃ、行くから!』と言って、電話が切れた。

何が起こったんだ?

強引なのは茜だけじゃなかったの?!

しばらく状況の判断を出来ずにいる私。

でも、一時間で、蒼が来る…。

そう思った私は、何が何だかわからないままシャワーを浴びて準備をした。