何もなかったんだという安心感と同時に、自分がとんでもないことをやらかしたという恐怖感が押し寄せる。

何かあったって文句は言えない状態。

男の子を部屋に泊めるってそういうことだよね…。


「美月…ホントになんにもしてないからな?」

「あ…うん……」


よっぽど不安そうな顔をしていたのか、蒼は改めて優しい口調でそう言った。


「信用してます…」


そうとしか言えない。


「…あぁ。」


でも…

いや……蒼はそんな事するような人じゃないと思う。

うん。

服だって着てたし!

そう自分に言い聞かせてみるものの、やっぱり男の子は怖くて…。

震えが止まらなかった。

だからって、『帰って欲しい』なんて、さっきのプチ切れモードだから勢いで言っちゃおうと思ったけど…。

なんだか今更言うのも。

…恩を仇で返すようなもんだし…。

葛藤の結果、とりあえず席を外したくて、ご飯を作ろうとキッチンに向かう。


「料理なんかできるんだ!」


ちょっとバカにしながら、カウンターの向こうからのぞき込む蒼。


「いつも外食ってわけにもいかないしね」


朝ご飯をすっ飛ばして、お昼ご飯が完成し、おいしそうに食べてくれた。