「…ちょっとごめん!」

「え?相原?」


茜の声も気にせずに、私の手を取って部屋から飛び出す蒼。

何が起こったのかわからない間に、店の外まで連れ出されていた。

手を離し、私と向き合いジッと目を見つめる。


「やっぱ、不安か?」

「え?」


あ…もしかして?


「さっき…カフェで話してる時、なんか気が進まないように見えたから。」


蒼に隠し事は出来ないな。

バレてたんだ…。

茜の彼氏で、蒼の親友…。


『美月に裏切られるとは思ってなかった!』


不意に、あの子の声が聞こえた気がした。


「…茜と…彼氏さんって付き合ってどれくらい?」

「え…っと、中2の時だから…3年目かな…。なんで?」


そんなに長く付き合ってる二人なら大丈夫だよね。

あんなことに…もう二度とならないよね。


「美月?」

「ううん…。大丈夫…。戻ろうか…。」

「…でも、美月辛そうだから。」


『ヒドイ!美月は味方だと思ってたのに!』


「…」

「美月?ごめんな、急にこんなことになって…。心の準備とか必要だったよな。」


多分、私を迎えに来てくれている途中で、蒼にも内緒で茜が呼んだんでしょ?

わかってるのに。

蒼が謝る事じゃないって。


「無理しなくていい。アイツら気にする奴じゃないし…気が向いたらまたって事で、今日は…」

「大丈夫!」


私は、蒼の声を途中で遮って笑顔で答える。


「蒼、そんなに人の心配ばっかりしてるとハゲるよ?」


ニっと笑いながら、蒼と視線を合わせると、安心したように微笑んでくれる。

ホントに、今日は蒼に心配をかけっぱなし。

そして…本当に…私にとっては厄日だ。