今回のように、1次会だけで解散するケースはなかなかないらしい。

茜が私に気を使って、解散させたように見せかけて、最初から召集するつもりだったんだ。


「わかった。行くよ」

「お、いいね!んじゃ、駿河待ってるから急ごう?」

「うん」


私は蒼の後ろをパタパタとついて歩く。

時々振り返る蒼。

まだ、別の班がいたら困るということで、さっき通った道ではなく、違う道で目的地へ向かった。

確かに、蒼だったらみんなに声をかけられるだろうから…。

私は納得して蒼のあとを追った。


「美月…」

「ん?」


突然立ち止った蒼。


「どうしたの?迷子にでもなった?」


冗談半分で、蒼の顔を覗きこんだ。


「いや…お前が迷子になりそうで怖いから、横歩いてくんない?」

「なにそれ!失礼なんだけど!」

「視界に入ってないと不安だから、ここにいて!」


蒼は、自分の横を指さして、私の定位置を指定する。


「ひどいー」

「お前がしっかりしてないから悪い!」

「はぁ?前の学校では、しっかり者で通ってたんですけど!」

「よっぽど、頼りない奴らばっかりだったんだな!」

「…もう、怒った!帰る!」

「嘘うそ、冗談だって!美月ー?」


180度回転して歩き始める私に駆け寄り、ご機嫌をとる蒼。


「茜に怒られればいいんだ!」

「それ、マジで怖いから勘弁して!」


本気で言う蒼に、思わず笑ってしまった。


「行こう?ダメ?」


首をかしげる蒼がなんだか可愛くて、『わかったよー』と言ってしまっていた。