「でもさ、だいぶ暖かくなったとはいえ、夜はまだちょっと寒いから、これ着て。」

「え、でも…蒼が…」

「俺は大丈夫。もう戻るし、美月優先。それ以上、具合悪くなったら困るだろ?」


そう言って私の肩に、着ていたパーカーをかける。

その時触れた蒼…の手に、またしても体がビクンと反応してしまう。


大丈夫。

蒼は何もしないから…。

自分にそう言い聞かせていた。


「美月…お前さ…」

「え?」


私の反応を伺いながら、少し前かがみになって顔を覗きこむ蒼。


「ちょっと気になって…」

「何?」

「…お前さ、俺…苦手か?」

「!」


どうしよう。

なんて答えればいいんだろう…。

蒼が…ということじゃないのに…。

そんなふうに思ってたなんて…。


「な…なんで?」


平静を装うつもりでいたのに、動揺が隠せない。

笑顔が引きつっているのが自分でもわかる。


「…なんでって、根拠はないけど…」

「…」


その通りだよ。

そうだよね。

蒼は、多分誰に対しても距離感の狭い人。

頭や、肩や…いつでも平気で触れてくる。

私はそのたびに、妙な反応をしてる。

極めつけはさっきの…蒼の手を振りほどいた…。

それでなくても、蒼は人をよく見ていて、いろんな事に気がつく人。

隠せるわけがないのかもしれない。