自己紹介なんてされたところで…。


「初めて話すヤツとかもいるだろう?」


先生に催促され、渋々立ち上がって後ろを向いた男の子は私の顔を見て微笑んだ。


「相原蒼。2組でした〜。よろしく。以上!」


短っ!

まぁ、そんなもんだよね。

特に言うこともない…。


「短いな〜。まぁ、相原を知らないやつは少ないだろうからいいか。」


知らないやつが少ない?

有名人なのかな…。


「次、秋野。」

「はい。」


私を飛ばして、出席番号3番の人があてられる。

私は振り向こうともせずに、肘をついて前を向いていた。

担任の先生は私のためにしてくれているんであろう自己紹介。

徐々に自己紹介は進んでいくが、私は全く興味はない。

その途中で、さっき相原と呼ばれた、前の席の男の子が振り返った。


「何でまた、この時期に転校?」


ビクッと反応する体。

この人は…


「…親の都合で」


そんな無難な返答をする。

本当の理由なんて話せない。

あんな現実…

話したくもない。