ホントに…優しいと言うか、懐が広いと言うか…。


「そろそろ戻ろう?夜はまだ寒いし、風邪ひく!」


そう言って手を差しだしながら、立ち上がる。

震えは止まったものの、坂下くんに会うのも正直怖いし。

なにより、今2人で戻ったら…。

いくら八つ当たりとはいえ、私はこれ以上事を大きくはしたくない。

いや、八つ当たりっていうのも、私の勝手な考えなんだけど…。

でも、今さっき言われたばっかりだし!


「あ、先に戻ってて?すぐ行くから!」

「何行ってんの、早く!」


蒼はなかなか引いてくれない。

二人揃って戻るのは絶対にマズいのに。


「…すぐ行くよ?…トイレ寄ってくから!」


適当な理由を付けて、蒼を先に戻るように促した。


「……そっか、わかった。」


蒼は少し気まずそう差し伸べていた手を引っ込め、店に向かった。

ほっとして、ベンチに座ったまま、また空を見上げた時。


「…美月?」

「ん?」


戻りかけていた蒼に呼ばれ、空を見ていた視線を戻す。

真剣な表情をした蒼が重たそうに口を開く。


「さっき、秋野達と何話してた?」


ギクッ


「え…っと。秋野さん達も心配してくれて…来てくれたみたい。」


いきなり核心をつく蒼に心の中はバクバク。

なんとか誤魔化せと自分に言い聞かせる。

恐る恐る蒼の顔を覗きこんでみると、疑っている様子ではなく、安心した。