「でもさ、美月ちゃんホント可愛いよね!」

「あ…ありがとう…」

「誰だよ…坂下に酒飲ませたの!ただの酔っ払い親父になってるぞ!」


そんな坂下くんを見て、クラスメイトは笑っていたけれど、私は一切笑えない…。

って言うか、むしろこの場から逃げ出したいくらいの恐怖が押し寄せる。


「ねぇねぇ、彼氏つくんないの?」

「や…あの…」


そう言った瞬間に坂下くんの手は、私の太ももに…頭は肩に倒れるように寄りかかる。

全身の血の気が引いて行くのがわかる。


「坂下やりすぎー!」


クラスメイトが笑う中、私の体は小刻みに震えだす。

坂下くんが悪意があってやってる行動ではない事はわかる。

でも、頭では理解できても、体の拒否反応は止められない。


「…美月?」


私の異変に気付いたのは、蒼だった。


「…顔色悪いぞ?大丈夫か?」

「そ…ごめん…ちょっと外の風に当たってくる。」


蒼が、坂下くんを引き離し、私はやっとの思いで立ち上がる。

明らかにフラフラの私。


「一人で行けるか?」


見かねて、蒼が私の体を支えようと手を伸ばす。


「いやっ!」


思わず、蒼の手を払いのけてしまった。


「あ…ごめんなさい。」

「いや…大丈夫なら…それで…」


私の声が響いた店内。

今までの笑い声が静まり、店内は一瞬にして静寂が訪れる。

楽しかった雰囲気を一気に崩してしまい、気まづくて…店の外に急いだ。