「やっと帰ってこれたぁ~!」


そう言いながら、蒼は自分のバッグをよけながら私の横に座る。


「別に、戻ってこなくても良かったのに。」


なんて、茜に言われながらも、蒼は茜の扱いにも慣れていて、適当に流していた。


「相原~!お前、青柳さん、独占しすぎ!」

「占領って何だよ…。」


今、戻ってきたばかりで、占領もなにもないと思うけど…。

蒼を追ってきたのは、坂下くん。

坂下くんも話をする機会の多い男の子。

蒼と仲が良いから。


「お前はたまたま運がよくて、青柳さんの前の席になれただけだろ?」

「そうだけど?」

「お前に青柳さんを独占する権利はない!」

「独占なんてしてねぇし!ってか、お前酒飲んだだろ!」


蒼と坂下くんのやり取りが続く。


「ねぇねぇ、青柳さん、携帯教えてー!」

「坂下、お前…。」


呆れた顔でため息をつく蒼。

坂下くんは、私と蒼の間に入り込み、腰をかけた。


「ねー、携帯!」

「あ…ごめん、携帯持ってないの。」

「そうなの?」


私の言葉を聞いて、茜と蒼が私を見たのがわかった。

うぅ…。

二人は、私が携帯を持ってる事を知ってる。

言わないでいてくれるかな…


「今時、高校生で携帯持ってないって、どうやって連絡しろってのよねー。」


…茜。


「確かに!」


茜の発言でクラスメイトは笑う。

…助かった。

信じてくれたみたい。


「今のところ困ったことないし、大丈夫。」

「私が困るっての!早く買ってよね!」


茜は、そのまま嘘に付き合ってくれる。


「はいはーい。努力しまぁ~す。」

「何その返事!やる気無さ過ぎでしょ!」


まるでいつものやりとりのようだった。


「じゃあ、買ったら俺にも教えてね!」

「うん、わかったよ。」


坂下くんがガッツポーズを決める横で、私は声に出さずに、茜に手を合わせた。

『ありがとう』の口パクも付けて。